題詠2010
できるだけ黒い言葉をささやこう 「ただしい虹の捕らえかた」より
屋上に立って誰かの遺失物 笑い袋をせーので押せば
下ネタが溢れ出てくる 前世の人こんな来世で申し訳ない
アリバイは蟻の群がり 二人してこぼしたサイダー蒸発しても
昼寝から覚めれば頭上で子供らのあいこあいこのじゃんけんの花
シャッフルとランダムって何が違うの? 傘の花の群れを見おろす
富士樹海くるくる剥いた包帯でターザンごっこのおてんばゾンビ
砂まみれ 間接キスで飲み干したペットボトルに夏、閉じ込める
さっきから学者くん学者くんって呼ぶけどボクはハカセくんです
未発表の言葉があふれ出したくて 狂え!鉛筆サイコロは2
「忘れてよ昨日のことは」冷えた床に勤怠カード散らばった朝
きらめきを濃縮する凸レンズ 抜け殻を焼く音だけ聞こえる
花びらを連れ去る風にまぎらせてそっと空耳つぶやいてみる
髪留めを脱がせばはらり匂い立つ 見なよ奥さんキューティクル異常
色欲のプログラミングされてない ららら正義のロボットよ飛べ!
日だまりのうらぶれ爺を捨ててほれ遊園地じゅう駆け出せよ、孫
落としたのは金の斧ですいやだからなんで候補に銀の斧出す?
どうしたよ嫌いなんだろ?俺のこと 殴って来いよ!愛媛みかんで
かさぶたが剥がれそうだからまだ寒い海に来ました苦しむために
オンラインゲームを生きる弟がマイクにつぶやく「外はSF」
公園のテコの原理を利用して飛べカタツムリつのだせやりだせ
横風を受け綱渡る天秤にお前、一回なってみないか
表向きの陰をかざして目眩ます 何ひとつとしてばれちゃいけない
そわそわと言霊が先走ったから はふはふとしか僕、言えなくて
「たいへんよくできました」の作文に自分でつけ足す花二重丸
にえたったあーぶくたった 音のない悪循環が回り出す夜
手に汗を握りたいからかつてない接戦のフリする指相撲
眠れない夜に火照った魂を胸から取り出す湯気立てている
大きすぎるカレンダーをめくるたび塩なめくじのように決意は
冬空に打ち上げた改造花火 まぐれでもいい「好き」の字に咲け