題詠2010
応援を待つ山小屋の窓越しに色仕掛けの女狐と目が合う
カミナリが落ちてみそ汁の湯気が消え西京漬けは固く冷えてく
押しも押されもしないアイドルの君と大衆酒場ですするバターコーン
なんですか「最近した?」って唐突にオレが何をしたって言うんですか?
迷い子を語る三つ子が放送に追われてけらけら館内を走る
この欄にサインをしたら二人もう さよなら僕のガールフレンド
ためらって「元気ですよ」と打つメール「無理しないでね」見破られてる
またしても接触不良のようです叩いてください直りたいです
穏やかじゃいられないから大声で元素記号を唱えて帰る
点滅する横断歩道の青がりでもつれあう舌 もう行かなくちゃ
ありふれた言葉のかけら こうやって並べ替えたらチクってするね
フラミンゴ立ちの流しに差す茜 菜箸ですする緑のたぬき
南北を指し示すしか能がない方位磁石に無言の嫉み
冷蔵庫のサーモスタット唸るたび縮む決心 もはやレーズン
人違いなのにちっとも否定せず書いた小山田圭吾のサイン
疑問符の杖を人混みで振り回す「ほぉれ分かんなくなっておしまい」
すきなトコどこでもいいってまいったなどこに乗せよかプッチンプリン
置き去りにされた仔猫がにゃあにゃあと愛くるしくて沸いた公園
ガタピシの引き戸をするり抜けてほほすり寄せる三毛を小春と呼ぼう
背の丸み同じと言えば同じだし暇だ蝦だとなんとでも言え